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アメカジ再入門 第2講|カウボーイは何を着ていたのか。ウエスタンウェアが生まれた理由

こんにちは、やまもんです。

前回の第1講では、1848年のゴールドラッシュから、鉱山労働者のために丈夫な作業着が求められ、そこからジーンズが生まれた話をしました。

同じアメリカ西部、同じ19世紀。

今回の主役は、鉱夫ではなく「カウボーイ」です。

映画や漫画でおなじみの、あの帽子とブーツの人たちですね。

実はこのカウボーイたちの服、鉱夫の作業着とはまったく違う理由で今の形になっています。

「丈夫ならなんでもいい」わけじゃなかったんです。

第2講のテーマは、「カウボーイは何を着ていたのか」。

ウエスタンウェアが生まれた理由を、順番に見ていきます。

目次

カウボーイという仕事は、思っていたより過酷だった

そもそもカウボーイとは、どんな仕事だったのか。

私も詳しく調べるまでは、「馬に乗って牛を追いかける、かっこいい仕事」くらいのイメージしかありませんでした。

実態は、かなり違います。

南北戦争が終わった1860年代後半から、テキサス州には野生化した牛(ロングホーン種)が大量にいました。

これを北の鉄道の駅まで、何百キロも歩いて運ぶ仕事。

それが「キャトルドライブ」です。

・1日中、馬の上で過ごす
・夜も交代で牛の見張りをする
・雨風、砂埃、真夏の直射日光にさらされ続ける
・とげのある低木や、岩場を進むこともある
・賃金は決して高くなく、多くは10代後半〜20代の若者だった

しかも当時のカウボーイには、南北戦争後に職を失った元兵士や、解放された黒人奴隷、そしてメキシコから来た「バケロ(vaquero)」と呼ばれる牧童たちも多く含まれていました。

実はロープ捌きも、馬具の使い方も、「カウボーイ」という言葉そのものの文化的なルーツも、このメキシコのバケロたちから受け継いだ部分がかなり大きいと言われています。

「ランチ(牧場)」「ラリアット(投げ縄)」といった単語も、もとをたどるとスペイン語です。

こういう背景を知ると、カウボーイというのは特定の民族や一枚岩の集団ではなく、いろんな出自の人たちが同じ過酷な仕事についていた、実に「アメカジ」らしい混ざり方をしていたんだなと感じます。

カウボーイという仕事は、思っていたより過酷だった

馬に乗るための服、というまったく違う条件

第1講の鉱夫たちに必要だったのは、「地面に膝をつく仕事に耐える丈夫さ」でした。

一方カウボーイに必要だったのは、まったく別の条件です。

・一日中、馬の鞍にまたがっていても股が擦れない
・ブーツの中に裾をたくし込める、細身のシルエット
・汗をかいても、動きにくくならない
・とげや小枝に引っかかっても、大怪我をしない工夫
・牛や馬に接触したときに、パッと外れる安全性

つまり同じ「丈夫な服」でも、鉱夫は「頑丈さ」、カウボーイは「頑丈さ+動きやすさ+安全性」を求めていたわけです。

このズレが、ウエスタンウェアという、ワークウェアとはまた違うジャンルを生んでいきます。

馬に乗るための服、というまったく違う条件

ジーンズはあったが、カウボーイ用ではなかった

面白いのは、この時代すでにリーバイスのウエスト・オーバーオール(後のジーンズ)は存在していたということです。

カウボーイたちも、実際にデニムのパンツを穿いていました。

ただし当時のジーンズは、あくまで鉱夫や農夫向けに設計された、ゆったりしたシルエット。

馬に長時間またがると、股や太もも周りの生地がもたついて、擦れて痛い。

ブーツに裾を入れようとしても、太さがあってうまく収まらない。

「デニムという生地は良い。でもシルエットが合っていない」

こういう不満が、カウボーイたちの間にはずっとあったようです。

この不満に、後年しっかり応えることになるブランドが、Wranglerです。

ジーンズはあったが、カウボーイ用ではなかった

Wrangler誕生。現役ロデオ選手と作った「カウボーイのための」ジーンズ

Wranglerというブランドが生まれたのは、1947年のこと。

下着メーカーとして知られていたブルーベル社が、本格的にジーンズ市場に参入するにあたって、ある人物に協力を依頼します。

「ロデオ・ベン」ことバーナード・リヒテンシュタインです。

ロデオ・ベンは、実際にロデオ選手たちの衣装を仕立てていた仕立て屋で、現役のカウボーイたちが何を求めているかを肌で知っていた人物でした。

さらにブルーベル社は、実際のロデオ選手たちの声も取り入れながら、パンツを設計していきます。

こうして生まれたのが、後に「カウボーイカット」と呼ばれるシルエットです。

・腰から太ももにかけてゆとりを持たせ、馬にまたがりやすくする
・裾に向かって細くなり、ブーツにすっきり入る
・座ったときに生地が突っ張らない、股上の設計
・バックポケットに施された、Wの字のステッチ(ロデオ・ベンの発案とされる意匠)

第1講のジーンズが「壊れないための工夫」の集合体だったとすれば、Wranglerのジーンズは「馬に乗るための工夫」の集合体だったわけです。

同じ「デニムのパンツ」でも、生まれた理由がまったく違う。

これを知ってから、私はWranglerのアーカイブモデルを穿くとき、無意識に「これは馬に乗るための形なんだ」と思うようになりました。

穿き心地の違いも、単なるサイズ感の問題じゃなく、そもそもの設計思想が違うからなんですよね。

Wrangler誕生

ウエスタンシャツの「スナップボタン」は、おしゃれのためじゃなかった

パンツの次は、シャツです。

ウエスタンシャツと聞いて多くの人が思い浮かべるのは、胸のあたりが三角形に切り替わった「ヨーク」と、ボタンではなく「パチン」と留める、あのスナップボタンではないでしょうか。

私も最初は、単純に見た目のアクセントだと思っていました。

実はこのスナップボタン、安全のための工夫だったという説が広く語られています。

牛や馬の作業中、シャツが柵や角、機材などに引っかかってしまうことがある。

普通のボタンだと、そのまま体ごと引っ張られて大怪我につながりかねません。

でもスナップボタンなら、強い力がかかった瞬間に「パチン」と外れてくれる。

シャツを犠牲にして、体を守る仕組みというわけです。

このスナップボタン付きウエスタンシャツが本格的に広まったのは、20世紀に入ってロデオ文化が盛り上がった時期だと言われています(このあたりは資料によって細部の言い伝えが異なるので、あくまで「そう語られている」ことが多い、というくらいの温度感で捉えてもらえればと思います)。

胸元や背中の「ヨーク」も、単なる飾りではなく、生地を補強しつつ汗を効率よく流す実用的な意匠から発展したものです。

私自身、RRLのウエスタンシャツを実際に着て本音レビューの記事を書いたことがありますが、あのヨークの切り替えと、パチッと小気味いいスナップボタンの感触は、実際に袖を通すとちゃんと「機能」として気持ちいいんですよね。

デザインだけ真似た服とは、どこか違う説得力があります。

ウエスタンシャツの「スナップボタン」は、おしゃれのためじゃなかった

カウボーイブーツの「かかと」と「とがった爪先」の意味

ブーツにも、ちゃんと理由があります。

カウボーイブーツの特徴といえば、

・かかとが高く、はっきりした角度がついている
・爪先が細く、とがっている
・筒(シャフト)が長く、膝下近くまである

このどれもが、馬に乗るための工夫です。

高いヒールは、馬具の「あぶみ(鐙)」に足が深く入りすぎて抜けなくなるのを防ぐためのもの。

もし落馬したとき、足があぶみに引っかかったまま馬に引きずられたら、命に関わります。

とがった爪先は、とっさにあぶみへ足を差し込みやすくするための形。

そして長い筒は、藪や棘、蛇、あぶみの革ひもとの摩擦から脚を守るためのものです。

つまりカウボーイブーツは、「かっこいいシルエット」が先にあったわけではなく、「命を守るための道具」として、あの形に行き着いたということになります。

カウボーイブーツの「かかと」と「とがった爪先」の意味

テンガロンハットの「テンガロン」は、実は勘違いから生まれた言葉

最後にハットです。

カウボーイハットの原型としてよく語られるのが、1865年に帽子職人ジョン・B・ステットソンが作った「ボス・オブ・ザ・プレーンズ」というモデルです。

広いつばと高いクラウン(山の部分)を持つこの帽子は、

・強い日差しから顔と首筋を守る
・雨をつばで受け流す
・空気の層ができて、頭部の断熱になる

という、西部の過酷な環境で理にかなった機能を備えていました。

余談ですが、日本でもおなじみの「テンガロンハット」という呼び方、実は「10ガロン(約38リットル)も水が入る帽子」という意味ではありません。

もともとスペイン語で、帽子の飾り紐や編み込み模様を指す「ガロン(galón)」という単語が、英語圏で「ガロン(gallon=容量の単位)」と聞き間違えられて広まった、という説が有力です。

私はこの話を知ったとき、「え、水関係ないんかい」と、ちょっと拍子抜けしました。

でも考えてみれば、こういう聞き間違いや言葉の変化も、移民の国アメリカらしいエピソードですよね。

ちなみに私自身も、50歳を過ぎてからステットソンのハット「マンハッタン」に手を出した記事を書きましたが、あのつばの角度やクラウンの高さは、伊達や酔狂で決まった形じゃなかったんだな、と今回改めて調べていて実感しました。

現代にも残っている、カウボーイ由来のディテール

ここまでの話も、今のアメカジのあちこちに残っています。

・Wranglerのカウボーイカット → 馬にまたがりやすい、腰から太ももにゆとりのあるシルエット
・ウエスタンシャツのヨークとスナップボタン → 補強と、とっさに外れる安全性
・カウボーイブーツの高いヒールと長い筒 → あぶみへの対応と、脚を守るための形
・つばの広いカウボーイハット → 強い日差しと雨から頭部と首筋を守る機能

第1講のジーンズが「壊れないための工夫の塊」だったのに対して、カウボーイの服は「馬に乗って生き延びるための工夫の塊」。

似たような無骨さに見えて、そこに込められた理由はけっこう違うんです。

現代にも残っている、カウボーイ由来のディテール

アメカジ再入門 第1講|すべてはゴールドラッシュから始まった。ジーンズが生まれた本当の理由

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この記事を書いた人

50歳で突然アメカジにハマった初心者オジさん。
難しいことはまだ分かりませんが、“好き”だけは本物。
実際に着て感じたことを、そのまま素直に発信しています。
イケてるジジィに、俺はなる!

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